神にそむいても
「美姫さま……」
しばらく床に伏せて泣いてると、秋保さんがそっと寄り添ってくれた。
「お食事が整いましたが」
「ごめん、いらない」
首を振りながら返事をした。
「美姫さま、やはり姫に」
「ダメだよ、そんなことしたら!」
智が!智が!
智がいなくなっちゃう。
智という人間が世界からいなくなってしまう。
それだけは絶対にダメ。
私は唇をキュっと噛みしめた。
「ですが」
「……」
私はそれ以上しゃべる気になれず、また床に伏せる。
秋保さんの小さなため息がきこえた。
ごめんね、秋保さん。
秋保さんもつらいよね。
あたったりしてごめんね。
私も皇子や姫に力になってほしい。
きっとあのふたりだったら皇極天皇のこと怒ってくれると思う。
でも、それじゃあ智が……。
それだけは絶対にダメ。
それだけは絶対にイヤ。