神にそむいても
その日はずっと部屋にこもっていた。
そして夜、皇子がやってきて姫の部屋に呼ばれた。
「美姫、どういうことだ」
皇子には今朝のことが伝わったんだと思う、
険しいカオで私を見てる。
「姫に伯父上のもとへ嫁ぐと言ったそうだが」
「はい」
私はうつむいたまま答えた。
「智を待たずして他の男のもとへ行くというのか?」
私は目をぎゅっとかたくつぶる。
「智はきっと私のことを捨てました。だからもういいのです」
皇子に会うまで何度となく心の中で練習した台詞を言葉にする。
あぁ、言霊って本当にあるのかもしれない。
口に出した途端、それがあたかも真実のように感じる。
皇子は見極めようとしているのか、押し黙っている。
緊張が走る。
数々の修羅場をくぐり抜けてきたであろう人の圧というものは
こんなにも重たいものなんだ。
そして、私はそれに押し潰されまいと必死で身体全体を使って演じていた。