神にそむいても
「美姫、顔を上げろ」
皇子のピンと張った声。
張りつめた空気が一層凍りつくかのようだった。
「………」
顔を上げることはおろか、緊張から声が出ない。
「上げろ」
恐怖心を振り払いながらゆっくりと顔を上げると、
皇子がじっと目の奥を見てくる。
「もういっぺん言ってみろ」
じっと私の心をのぞきこむように見てくる。
「はい、智は私のことを捨てました。帝のもとへいかせてください」
見透かされないようにじっと皇子の目を見つめ返した。
皇子で鼻で笑い、
「何を血迷った事を。お前はそれ程にしか智を想っておらんのか?」
とバカにしたように言う。
目から涙があふれる。
悔し涙かもしれない。
よっぽどぶちまけてしまいたかった、あんたたちの母親のせいだって。
でも、そんなこと言えない。
言えるワケがない。