神にそむいても
私は涙を袖口で乱暴に拭って、ニッコリと笑った。
「どうとでもおっしゃってください」
皇子が目を見開いて、唇をわなわなと震わせてる。
「お前の事は見損なったわ!
お前の顔など見たくもない。この部屋から今すぐ失せろ!」
皇子はまるで野良犬でも追っ払うかのように手で払いのけるような仕草をする。
気がふれたかのように私はニコニコしながらその場をあとにした。
今回の件が全部うまくいったとして、
今朝皇極天皇からきいたようにその時智が解放されて、
私がその時にはもう他の人の奥さんになっているワケで。
やっぱり智は裏切ったと思う?
皇子みたいにそれくらいしか想ってくれてなかったのかって思う?
それはつらいな。
ねぇ智。
智だけは私のこと信じて。
そして、心だけは智のものだって思っていて。
ねぇ智。
智もいつかは私以外の人と結婚するのかな、するよね。
それは仕方がないことだよね。
せめて私のことを一番に想っていてほしいっていうのはやっぱり都合がいいかな。
でもね、もしそう想ってくれるなら、
それだけでいつかは幸せだって思える時がくるかもしれないな。
この世界ですごくすごく短い間だったけど、智と夫婦として過ごせたこと、
本当に幸せだった。
夢みたいだった。
そう、本当に夢みたいだった。
やっぱり夢だったんだね。
ありがとう智。
どうか無事でいて。
さようなら智。
必死の決意 終