神にそむいても
「と言いたいところなんだけど」
孝くんが困ったように笑ってる。
「ん?」
「智、寝てる」
「は?」
自分でもわかるくらい眉間にシワが寄る。
いくら慣れた友達だろうと、普通来てる最中寝るかな?
まぁ、マイペースな智らしいけど。
とりあえず、私はいったん洗面所で手を洗った。
「智は?部屋?」
「うん」
「そうなんだ」
「あ、おばちゃんが夕飯オレも食べて帰っていいって言ってくれてたし、
智も寝ちゃったからボチボチ帰ろうと思ってるんだよね。
だから、美姫ちゃん一緒に食べよう?」
「うん、いいよ。お母さんは?あ、そか。今日夜勤か」
「うん、オレらが帰ってきてから入れ違いで出てったよ」
「そっか。じゃあ、荷物置いてくるね。待ってて」
「ん」
ウチはいわゆる母子家庭。
バツイチで看護師の母親は私たちの大学進学のためにも、夜勤もこなしてる。
父親が一応仕送りしてくれてるらしいけど、母親いわくそんなもんじゃ全然足りないらしい。
成績不振になったらダメだってことでバイトはしなくていいって言ってくれてるから、甘えてる。