神にそむいても


自分の部屋に荷物だけ置いてすぐにリビングへ入ると、まるで自分ちみたいに孝くんが夕飯をテーブルに並べてくれていた。

「準備してくれてたんだ。ありがと」

「ごめんね、厚かましくって」

照れたように笑う孝くん。

「ううん、助かる」

「ならよかった」

ふんわりと笑うカオがワンコみたい。

本当に優しくて気が利くヒト。
こんなヒトが自分のカレシだったらきっと幸せなんだろうなとよく思う。


今日はカレー。

お互いに定位置と化してる場所、4人掛けのテーブルに対角線上に座る。


「いっただきまーす」

「いただきます」

「うん、うまっ!美姫ちゃんのお母さんはマジで料理上手だよね」

いつも本当においしそうに食べる孝くん。
そして、必ず母親の料理の腕を褒めてくれる。

孝くんの環境を気遣ってっていうのもあるんだろうけど、
ウチのお母さんもこのカオを見るのと褒め殺しが嬉しくて、孝くんがウチに来たらいつもご飯誘うんだろうな。


「やっぱり誰かと食べると、フツーにおいしいのがチョーうまくなるよね」

「そだね」


孝くんの境遇を考えると、納得できる。

彼が高校入学と同時に、父親の転勤に母親がついていき。
一人っ子の孝くんは去年まではおばあちゃんと暮らしてたんだけど、そのおばあちゃんが骨折で入院してそのまま老人ホームに入っちゃった。

たまに両親が帰ってくることもあるけど、ほぼ独り暮らし状態らしい。

そして、私自身たまに独りでご飯を食べることがあるから、それは実感してることでもあった。


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