神にそむいても


目を醒ました翌日、
智は退院して一足先にウチに帰っていた。

私にはお母さんが仕事を休んで昨日まで付き添ってくれていた。

そして、今日から仕事だから昨日家に戻って、
入れ替わりで智が迎えにきてくれた。


「荷物これ?」

「うん」

ベッドに置いてたバッグをひょいっと持ってくれる智。

昨日のうちにお母さんがほとんど荷物を持って帰ってくれてたから、
智が持ってくれた旅行用のミニバッグとガッコー指定のスポーツバッグだけ。

私はスポーツバッグを右肩にかける。


「んっ」

智は空いてる右手を出してくれたので、
それに応えるように左手で握った。

智の手だ。

少しだけ骨ばってて大きい、まぎれもない智の手。
あの世界で私を最後まで離さなかった智と同じ手。


私たちはどちらからともなくお互いのカオを見つめる。

「帰るか」

私は大きくうなずいた。


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