神にそむいても
大阪からの新幹線の中。
研修旅行初日、
新幹線の中ですでに気分がすぐれなくて景色を楽しめなかったから、
私は窓にへばりつくように外を見てた。
「今日、孝くるから」
通路側の智がポツリ。
孝くん……。
実は入院してる時に何度か私のことを心配してくれるlineが届いてたけど、
返事を全然返さなかった。
智のほうを見ると、智は私の視線に気づいて見返してくれる。
「ふたりでちゃんと言おうな」
智は私の右手をぎゅっと握ってくれる。
そのカオはすごくやさしい。
智は一番親しい友人をなくすかもしれない。
それは私のせいと言ってもいい。
でも、もう迷わない。
智も、私も。
迷う必要もない。
胸を張って生きていこうって智と決めた。
だから私はもう偽らない。
偽る必要もない。
「ありがと」
智は私を引き寄せて、そっとキスをくれた。