神にそむいても


「もう他のヤツとしたらダメだからな」

「当たり前だしっ!智こそ浮気しないでよ?」

「するワケねぇしっ」

顔を見合わせて笑った。


ひとしきり笑うと訪れる沈黙。

どちらからともなく唇を重ねた。


「オレの部屋行くぞ」

智は私の手をひっぱって自分の部屋へ行く。

智の部屋に入ったのはあの頃以来。

住人同様、あの頃よりも少し大人に近づいた部屋の雰囲気。

初めて智とキスをしたあの頃、
こんなふうに智と想い合える日がくるなんて一生ないと思ってた。


私たちはベッドに並んで座った。

「あっちでは何回もオレたちヤッてんじゃん。
 でも、なんか美姫とそういうことしたっていう実感がないんだよな」

「わかるかも。
 私も、今でもあれって夢だったのかなって思うし」


智はやさしく笑ってから顔をのぞきこんでキスをくれた。

それは徐々に色の含んだものにかわる。
重なった唇の端から私の小さな吐息がもれた。

すでに色におぼれてる私のカオを見る智の瞳も、
今からの艶事を想像するには容易で。

私の子宮は智を欲していた、
それは狂いそうなほどに。


そうして、私たちはつながった。
深く深く。

あの世界で幾度となく智を感じたけれど。
それは今となってはどこか夢のような出来事のように感じていたけれど。

ひとつになった今、あれは夢なんかじゃなかったとはっきりとわかる。

私のカラダはすっかりと智に染められていたから。
すみずみまで智のことを、カラダはちゃんと覚えていたから。


好き。
そんなコトバじゃ足りないくらい。

照れくさいけど、こういうの愛してるっていうのかななんて
智の腕の中で想っていた。




夢幻のはざま 終


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