神にそむいても


「美姫ちゃん?智くん?」

私と智がお墓に向かっていると、
後ろから男性の声がする。

振り返ると花束を抱えた男性が立っていた。

この人が私のお父さん?

年齢は多分三十代後半。
だけど、年齢よりもずっと若く見える。

そして、自分の親にこんなふうに思うのはヘンかもしれないけど、
けっこうかっこいい人だと思った。


「はじめまして」

智がそう言うと、その男性はクックッと笑った。

ん?
なんで笑うとこ?

智もちょっとムッとしてる。


「ごめんごめん。僕らね、前に会ってるから」

え?

「だから、初めてじゃないんだよ」

智と私は顔を見合わせる。

多分智も「いつ会った?」っていいたげ。


「僕が社会人になった頃、一度美姫ちゃんを引き取ろうと思って。
 その時に君たちに会ってるんだよ?
 覚えてないだろうね」

私と智はうなずいた。

「でも、美姫ちゃんをつれていこうとしたら、
 智くんが必死にそれを阻止してね。
 だから、お姉さんに美姫ちゃんのことをお願いしたんだ」

私と智は顔を見合わせて笑った。



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