神にそむいても
十年後。
玄関のドアが開く音がする。
「あ、パパだ!」
パタパタパタ。
三歳になったばかりのパパっ子の息子が
うれしそうに玄関へ駆けていく。
私はその後ろを見守るようにして
すっかりおばちゃんになったミケを抱いて歩く。
「おかえりなさ~い!」
「ただいま」
スーツ姿の智がネクタイをゆるめながら、
私たちを見て目尻を下げた。
ミケはゆっくりと私から下りて、智の足もとにすり寄る。
息子はその場でピョンピョンと飛んでる。
「おかえり」
智からバッグを受け取った。
智は息子を肩車して、
「天人(タカト)、今日はなにして遊ぼうか?」
と言いながらリビングへ歩いていく。
「ん~っとね」
ふたりの後ろ姿を見ながら、
今日も智と家族でいることに感謝する。
皇子に、姫に。
秋保さんに、うたさんに。
数えられないほどのお世話になった人に。
そして神さまに。
ありがとう。
「美姫」
「ママ」
柱のようにひとつになったふたりがこちらを振り返る。
「ハラへった~」
「おなかすいた~」
「は~い、すぐご飯にするね」
みんなありがとう。
今日も私は智と幸せに生きています。
エピソード 終