神にそむいても
「あのさ」
「ん?」
私の緊張なんて多分気づいてないんだと思う。
意を決して発した言葉に対し、のんびりとした返事が返ってくる。
「研修旅行の自由時間の時、誰かまわる人いるの?」
「……美姫は?」
「今、私がきいてるんだけど」
「……孝とまわるの?」
「なんで?」
カチンとしながらも思わずきいてしまう。
智の思うツボだって頭ではわかってるのに。
「孝から誘われたかなと思って」
「………」
「孝とまわるんだ」
智の冷徹な視線に背中がひんやりとする。
私は悪いことも後ろめたいこともしてないっていうのに。
「まだ決めてない」
「けど、迷ってるってことは言われたんだ」
「………うん」
「ふ~ん……」
目の前の人の表情は自分の表情を映してるってきく。
私の目の前の人は不服そうにしてる。
多分私もおんなじようなカオしてる気がする。
「てか、さっきから私の質問にぜっんぜん、答えてなくない?」
「……別にいいじゃん誰だって」
「え、誰?」
「だからいいだろ別に」
智はそう言ったきり無言になり残り数口をかきこむようにして食べ終わると、
さっさと自分の部屋へ戻っていった。
揺れる想い 終