神にそむいても
「したことないんだぁ!」
自分でもわかるくらい興奮して言った。
「いいだろ、別に……」
すねてそっぽを向く智。
いつもなら、このあたりでやめてしまう揶揄をとめる術はこの当時の私にはまだなかった。
ううん。
もしあったとしても使わなかったと、今は思う。
「ふ~ん、まだしたことないんだぁ」
「そういう美姫こそあんのかよっ」
「ヒミツ~」
すねたような表情でつぶやく智がかわいくて、ついついはぐらかしてしまう。
「マジかよ」
智がそうつぶやいたきり黙りこくってしまったものだから、
気まずくなって、私も黙ってしまった。
「………ホントはしたことあんのかよ」
「いいじゃん別に。私のことは」
真顔で見つめてくる智に、どうしていいのかわからなくなって思わず顔をそむけた。
「よくねぇしっ」
え……。
おそるおそる智を見ると、怒ったように悔しさをにじませていた。
「オレたちはなんでもずっと一緒なんだから。秘密だって共有してきた」
確かに、小さい頃からお互いに隠し事ひとつしたことがない。
なんでも一緒にして、いつでも一緒にいないと不安だった。