神にそむいても
「キス、してみるか……?」
「なんでそうなるの?」
ジワリジワリとにじりよってくる智。
「待って待って!兄妹でキスとかおかしくない?」
必死で智を制するけれど、おかまいなしに距離をつめてきた。
「外国はあいさつ代わりにするんだってきいたことある。それに、美姫とならしてみたい」
『美姫とならしてみたい』、
これは本当に小さな頃から智の口癖のようなもの。
『美姫がするならボクもしたい』
『ボクも美姫と一緒にピアノ習いたい』
『ボクも美姫とおなじごはんがいい』
そういう口癖はいつも有言実行。
かなわなかったことなどなかった。
だから思わず目をぎゅっとつぶった。
ホントに一瞬の出来事だった。
かすかに唇が触れ合ったような気がした。
おそるおそる目を開けると、あきらかに私の知らない智が目の前にいる。
私を抱き寄せ、初めは本当にぎこちないキス。
そのうちに何度も何度も深く唇を重ねた。
息の仕方も、息がまともにできているかもわからないような。
頭がクラクラした。
頭の芯が痺れて、ただただ智との口づけに溺れた。