神にそむいても
窓のカーテンを閉め、目をつぶった。
だけど、さっきの夢のこともあって、寝ることもできず。
ただただ、目をつぶることしかできなかった。
それから多分30分も経ってないと思う。
「美姫ちゃ~ん」
小声で私を呼びながらバスに入ってくる人がいる。
孝くんだ。
通路側に体をちょっとだけずってぴょこんとカオを出すとそれに気づいて、
孝くんがニコッと笑った。
「どうしたの?もう見学終わったの?」
「うん、一応ね」
ちょっとだけ困ったように返す孝くん。
いかにもウソくささがにじんでる。
ウソつきの私なんかと違って、正直者の孝くんらしさが出てる。
「抜けてきたんじゃないの?」
「うん、ホントは抜けてきた」
いたずらが見つかった子供みたいにテヘって笑った。
「美姫ちゃんいないからどうしたのかなと思ったら、
しほりちゃんがここだって教えてくれたから」
私が元の窓側の場所に戻る間もなく、
孝くんは当たり前みたいに隣に座ってくるから、すごく密着してる。
ふとさっきの智と太田さんの後ろ姿が思い出されて
なんだか孝くんと距離を空けるのもわずらわしくなった。
ここにいないのに、あてつけみたいにして密着したままでいる。