神にそむいても


枕元に置いたバッグの中からlineが届いた音がする。

孝くんかな?

体の向きをそのままに左手だけ伸ばして、手探りでスマホを取り出した。

え……。


“今日体調よくないって孝にきいた”

智からだった。

最近はめったに連絡なんてしてこない智との最後のやりとりは1か月前。

母親の勤務の変更で急きょ夜勤になったことを私から知らせて、
”了解”ってだけ返してきたもの。

こんな風に心配してくれてたのはいつだっけ。

あぁ、あの夜までか。
私たちがイケないことをした夜ぐらいまでだったっけ。


昼間の孝くんとのキスのことがよぎる。

まさか孝くん言ったりしてないよね?

智と友だちだって言っても、智と私は兄妹なんだし。
言わないよね。

こういう時だけ兄妹を言い訳に利用しようとする。
サイテーだな。


“うん、あんまよくないよ”


待っても待っても。その後の返信は来る気配がない。

なにが言いたいんだろ。

30分以上待ってみて、スマホを投げ捨てるようにして頭の上に置いた。



< 54 / 233 >

この作品をシェア

pagetop