神にそむいても
「あれ~美姫ちゃん。おはよう!」
大きめのTシャツを羽織って裾を無造作に曲げたジャージを履いた孝くんが
玄関でストレッチしてる。
私に気づいて脚だけ続けながら、ニコニコしながら手を振ってくれる。
まるで、今日みたいなお天気の孝くんが私には眩しすぎて、思わず目を細めた。
周りにもおんなじような格好をして同じようにストレッチをする男のコたちがいた。
多分、孝くんと同じバスケ部の男子。
見知った顔もある。
でも、智の姿がない。
「おはよ」
「おはよ~!」
私が挨拶を返すと、ストレッチを中断して私にブンブンと手を振ってくれる。
「孝、やめんなっ」
「うぃ~」
孝くんは隣でストレッチしてる男子に怒られ、
いたずらっコが怒られた時みたいに私に向かってニヤッとした。
「早いね~」
「孝くんこそ」
「うん、テスト前からずっと部活ないでしょ。
だから、カラダなまっちゃうから、
バスケ部の仲間でちょっと走ってこようかってハナシになってさ」
「そうなんだ」
「体調どう?」
「うん、……見てのとおりだよ」
「そっか!よかったぁ」
私の体調がよくなったのはもちろん、
その言葉には絶対に今日の自由時間のことが含まれているから、
曖昧に笑うしかなかった。
顔ぶれの中には何度探しても智がいない。
もしかして今度は智の体調が悪い、とか?
智は基本的には元気なんだけど、
昔から行事の時に限って熱とか出しちゃうような子供だったから、
もしかしたら……。
でも、それなら、私の体調がよくなったのが尚更に悔やまれる。