神にそむいても
「すまん遅れた」
背後からする声。
誰かは振り返らなくてもわかる。
「おっそいよ、智~」
孝くんが口を尖らせて言う。
「ホント、お前だけ長く走れよ~」
「だな~」
「よし、孝。智の居残り決定だな!」
「けってーい!」
孝くんを筆頭に、メンバーから口々にやいのやいの。
「するかバカ」
智はそう言いながら、一瞬だけ私のほうを見た。
視線が絡み合う。
本当に一瞬だけ。
胸が痛い。
私をすり抜けて智はみんなの輪に溶け込むと、ストレッチを始める。
「美姫ちゃんも一緒に走る?」
「え~、ムリムリ」
「ザンネ~ン」
孝くんは両頬に両手を当てて首をかしげる、
まるで女のコみたいなリアクションをとった。