神にそむいても


智たちが座っているほうをチラッと見ると、孝くんがこちらを見てる。

声を出さず口だけで
『ダイジョウブ?』
って言ってるのがわかった。

私は小さくうなずく。


智は私に背を向けるように座っている。

そして、太田さんがしっかりと智の隣を確保してる。
今までは、そこは私の場所だったのに。


「もう残そうかな」

「うん、そだね。あとでセンセーになんか薬もらったら?」

「うん、そうする」


胃がムカムカするし、
また車に酔う可能性があるから乗り物酔い用の薬を出発前に飲んだ。

だけど、やっぱりバスに酔ってしまって、
結局、昨日と同様、午前中の見学はバスの中で休んでいた。

ムシャクシャイライラ。
いろんな負の感情を抱えながら、いつのまにか眠っていた。


薬を飲んだのとあまり朝ご飯が食べれないのと午前中はずっとバスの中で寝たのと、
そういうモロモロのことがきいたのか。
昼食の時間にはすっかり元気になっておなかペコペコだった。

「よかった、美姫が元気になって~」

お昼のからあげ定食をペロリたいらげたのを見て、しほりはホッとした様子でいる。
一緒のグループの友達もニコニコして私を見てる。

おなかがすいていたからいつもよりも早いスピードで食べたせいもあるけれど。

正直、味なんてわからなかった。
この後のことが頭の中を侵食してたから。

だから、それを考えないですむように、一生懸命食事に集中した。
集中するしかなかった。



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