神にそむいても


「美姫ちゃんはどっか行きたいとこある?」

「う~ん特にないかな。孝くんは?」

「じゃあね、オレについてきて」


手……。

孝くんは隣に並ぶと、当たり前のように手を握ってきた。

深く考えずその手を握り返すと、
孝くんは私のカオを見てホッとしたように笑ってくれた。

うん、これでいいんだ。

姿の見えない智はきっと今頃太田さんとふたりでいるんだと思う。

うん、これでいいんだ。これで。


外に出て、ウチの高校の人たちの行動は本当に見事なまでにバラバラだった。

同性グループで固まってる人たち。
男女混合のグループ。
その人たちからはすごく注目を浴びた。

中には孝くんのことを好きだった女子もいるようで、
私に対する視線がこわいくらい鋭かった。


そして、男女ペアになって行動している人たちの表情も本当に様々だった。

照れくさくて距離を置いて歩くふたり。
元々付き合ってていまさら感がぬぐえないふたり。
私たちみたいに手を繋いでるふたり。


私と孝くんはまだ付き合ってはいないけれど、
「ああ、あのふたり付き合うんだ」って思われている視線をビシビシ感じる。

心の中で「そんなんじゃない」と必死で否定してる私。
一方の孝くんは決してうぬぼれなんかじゃなく自慢げにしている。

手を繋いでる男女でこんなにも温度差があるのはきっと私たちだけ。


智の姿は相変わらず見えない。

ねぇ、智。

智たちも温度差がある?
心の中だけでも、必死に否定してくれてる?


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