神にそむいても


あ……。

店の奥に智と太田さんもいた。


「智たちも来てたんだ~!!」

つないだほうの手をブンブンとさせるから、
イヤでも智に私たちが手をつないでることがバレてしまった。

智の目がこわくて店内を見回すフリをしてよそを向く。


「孝くんもコスプレしにきたの~?」

智の代わりに答える太田さんの声は弾んでる。

私はうつむきがちに立っているしかなかった。

「そっ。てか、イガ~イ。智もするなんて」

「オレはあんまやりたくないけど、太田がさ、」

「うん、そうなの~。だって、せっかくなんだもん。ね~」

「ね~」

なぜか意気投合してる孝くんと太田さん。

だけど、智もふたりに比べて温度が低いことが今の私にとってなによりの救い。

そんなのほんの気休めにしかならないことはわかってる。
でも、それにすがればなんとかここにいることができる。


チラリ、
私が少しだけ視線を目の前のふたりに向けると、太田さんは智に腕を絡ませた。
それを特に拒む様子もない。

見たくない。

衣装を選ぶふりをするしかなかった。

自分も孝くんと手をつないでたクセに、智がそういうことするのは許せないなんて。
どんだけワガママなんだろ。

智はどう思ったのかな。

苦しいって思ってくれてる?

せめてそう思ってくれてれば、幾分救われる。
せめてキモチだけは一緒だったら、幾分か救われる。


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