神にそむいても


「ねぇ、どっちがいいと思う?」

「どっちでもいいんじゃない?」

「えー、”智くん”選んでよ」


今確かに彼女は智のことを”智くん”って呼んだ。よね……?

太田さんは智のことを”葛城くん”って呼んでた気がする。
うん、昨日エレベーターの前でふたりに会った時は確かにそう呼んでた。

呼び方が変わったっていうのはなんでなんだろう。
やっぱり特別な関係になったってことなのかな……。


「美姫ちゃ~ん、どっちがいいかな~?」

孝くんの困ったようなカオにハッとした。
智たちのことが気になって孝くんとのことが上の空になってしまっていた。

孝くんは二枚の衣装を手に持ってる。
一枚は黄緑色、もう一枚は黒。

黒のほう、智に合いそう。

あぁ、ダメダメ。集中集中。


「孝くんならどっちも似合うよ?」

「ありがと。でも、美姫ちゃんの意見がききたいのっ」

「……黄緑のほうかな」

「オッケ~。じゃあ美姫ちゃんの、オレが選んでもいい?」

「うん、いいよ」


そうして、女性用の衣装のところへ向かう。

ふたりはもう着替えに移ったようで、孝くんと話してる間にいなくなっていた。


「じゃあ、オレとおんなじ色のこれで、下はこれかな」

メインの布が黄緑色。
下にズボンのようなものをはくんだけど、それはストライプの色とりどりのものを選んでくれた。


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