神にそむいても
「姫、このような事は俺にも話しておいてくれ。
ただでさえ、俺には敵が多い。お前に何かあるかもしれん。
……しかし、今回は姫の言うように神の導きとしよう」
「ありがとう、お兄さま」
そうして、姫は満面の笑みを浮かべて皇子の胸に飛び込んだ。
この状況から察するに、私は一応命の保証はされたんだよね?
っていうか、
この男の人って“お兄さま”って呼ばれてるし、姫が間人皇女だとするなら、
多分この人は中大兄皇子のような気がする。
敵が多い。
そうだよね、乙巳の変で蘇我氏を滅亡させたワケだし。
他にも革新的な政治をした人だもん。
それを快く思ってない人もいるはず。
「うた、なにかあればすぐに俺に知らせるようにしてくれ。姫じゃあてにならんからな」
「まっ。お兄さまひどいわ」
「ハハッ。そう怒るな、綺麗な顔が台無しだ」
「ふふふ」
わわっ!
私に構わずキスするふたり。
「ハハ、お前には刺激が強いか?」
私を見てニヤニヤしてる。
ムカつく!
ってか、もしかして皇子は見せつけてるの!?
「そ、そうですね……」
「そうだろうな」
勝ち誇ったようなカオで私を見る。
ムッカー!!
姫は皇子の胸の中で頭をなでなでされて、すっかり夢見心地の様子。