神にそむいても


姫の部屋に案内されると、
私を呼んでいるときいていたにも関わらず、
彼女はまだふとんの中でまどろんでいた。

三毛猫のミケは彼女のそばで毛づくろい。

あの男はいなくなっていた。
よかった。


「おはようございます」

部屋の隅に座って挨拶をすると、けだるそうに姫は体を起こす。

彼女の胸元は思いきりはだけていて、私の視線を察したうたさんが慌てて整えた。

それをされるがままでいるところを見ると、
きっと彼女のこういう姿は日常茶飯事なんだろうな……。

やっぱり、こういう部分も私とは違うな。


「ねぇ、お兄さまってとっても素敵なお方だったでしょう?」

「そう、ですね……」

お世辞は大の苦手。

だけど、”あれのどこが?”って言いたくなる気持ちをぐっとこらえる。
ストレートに発言すると、命がヤバそうだもんなぁ。

口の端がひきつりそうになるのをこらえながら、話を合わせた。


「好きになったら駄目よ」

妖艶な笑みを浮かべながら、釘をさす。

”大丈夫です、好みじゃありませんから”
とは当然言えず。

「はい……」

唇の端がピクピクするのを感じながら、返事だけをする。

「ふふふ」

容姿はウリふたつかもしれないけど、やっぱり表情は全く違って、
色気をたっぷりと含んだその表情は女の私ですらゾクッとする。

本当に、知れば知るほど別人だなぁ。


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