偽りの副会長に恋をした
_ガチャ

「…ただいま」

家に帰り、両親に挨拶する。

「…お帰り」

「お帰りなさい。今日は生徒会で遅かったの?」

『そっけない返事を返す父』と『我が子を大切に思う母親』…ってな感じの両親。

「うん…ちょっとね。学校で勉強してたんだ」

本当のことを言うわけでもなく、適当な言い訳をいう。だけど、実際に学校で勉強して帰る日もあるから『噓』とは断言できない。

「そうなの?龍樹が勉強なんて珍しいわねぇ!!予習でもしてるの?偉いわねぇ!!分かる問題を念入りに取り組む事は、とてもいいことよ!」

「うん」

母親は、昔からあの調子だった。

僕は小さいときから、ある程度のことは一通り出来てきた。それを見た母親は『息子は何でも出来る子』と思い込むようになっていたのだった。

本当は、予習復習を何度も繰り返してるなんて、母親には想像する事が出来ないだろう。

「でも、あんまり根を詰めすぎると体調崩しちゃうから、程々にね」

「…わかってるよ」

誰も認めてくれない。そんな事は、とうの昔に諦めた。


…だけど、たまに思うんだ。無邪気な子供みたいに思うんだ。

_『凄いねっ!』って褒めて欲しい って




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