駄菓子屋へようこそ(仮)
そんなことを思いながらひと月も経った頃。
土曜の昼下がり、仕事も休みで晴れた心地よい風を感じながら、いつものように土手の草むらで漫画を読んでいたわたしの脇に、1人の男の人が転がり落ちてきた。
「きゃあっ!?」
そりゃ咄嗟に避けるでしょう。
飛び上がるように退いた。
「………いっ、てえ……」
「…だ、…大丈夫、……ですか??」
もの凄く距離を取りつつ、読んでいた雑誌を盾に、びくびくしながら声を掛けてみる。
何度でも言うけれど、わたしは極度の人見知りだ。
以前なら声すら掛けずに走って逃げた。どうして声を掛けることができたのか、掛けようと思ったのかはわからない。
「………はら………へった」
聞き取れないほどの声を発すると、土手の途中で動かなくなってしまった。
カーキ色のデニムシャツに白いTシャツ。薄手のカーゴパンツという出で立ち。
髪は伸びかけ、顔はよく見えない。かなり背が大きく、体格もいい。ただ、全体的に薄汚れてヨレヨレだ。
言っても小さな町だ。
よく知らなくても顔見知りくらいは特徴でわかるけれど。
見たこともない大きな男の人だ。