誰にも言えない
ひとり
目を閉じると、シャーペンを走らせる音と、参考書をめくる音、そして、かすかにひそひそとしゃべりあう声が聞こえてきた。
女の子の声だ。
楽しそうな感じの調子だから、悪口ではなさそう。
恋愛かな?
……私には縁のない話。
ゆっくり瞼を開けると、まず前の席の男子の背中が目に入り、それから、教室全体が視界に広がった。
教師がいない教室で、全員が席に座って、熱心に問題を解いている。
こんな姿はうちのクラス……県内トップの進学校である私の学校では当たり前の日常だった。
私はこの学校に入れて、本当によかったと思っている。
休み時間も勉強しているなんて、中学の頃じゃあ考えられない。