銀色の月は太陽の隣で笑う
そして“廃れた”の部分で少女が若干むくれたのを見て、慌ててその部分に修正を入れた。
「そこに暮らすのは、白銀の髪に青みがかった銀色の瞳の少女」
本当は、白い髪に青い瞳と書いていた部分にも修正を入れていく。
「これだけでも想像が膨らんで、頭の中にはいくつも物語が展開されているんだ」
そう言って、トーマはまだ何も書かれていない空白部分を、トントンと指で軽く叩いた。
「けどね、僕はキミを題材にした想像の物語が書きたいんじゃなくて、キミの日常を、ここでの生活をありのままに書きたいんだ。その方が、素敵な物語が出来そうな気がしているから」
月明かりに浮かび上がるトーマの表情は、真剣であって同時に楽しそうでもあった。
好奇心に輝く瞳が、真っ直ぐに少女を捉える。
「是非僕に、キミの物語を形にさせて欲しい」
まるで少年のような純粋な輝きを持つ瞳からは、悪意なんて微塵も感じられなくて、少しだけ、ほんの少しだけ少女の警戒心が薄れる。
「……どう、かな?」