銀色の月は太陽の隣で笑う
6 冷えた体にジンジャーレモン
今日も朝から相変わらずの雨。そんな中、ルウンはこれでもかというくらい頭を下げていて、下げられている側のトーマは、困惑した顔で何とか頭を上げさせようと奮闘していた。
「いいんだよ、全然。もともと、この家はルンのものなんだし、言ってみれば僕は居候みたいなものなんだから。
ルンがこの家のどこでなにをしようと、それはルンの自由なわけで、だからそんなに……」
そんなに謝らなくても、と続けたかった言葉は、顔を上げてふるふると首を横に振ったルウンに遮られる。
「トウマ……昨日、寝てない。起きたら、机のとこにいた。わたしが……ベッド、取ったから」
「いや、あれはね……!」
自分で言いながら申し訳なさがこみ上げたのか、再びルウンの頭が下がりそうになったところで、トーマは慌てて口を開く。
ベッドはそもそも取られたわけではなく、トーマが進んでルウンを寝かせただけなのだが、それを説明したところで、ルウンの中での“取った”という気持ちは変わりそうもない。
家主であるルウンには、極力いつも通りに生活してもらいたいと思っているトーマだが、それが難しいことであるのはよく分かっていた。
何しろ、長く一人で暮らしてきたところに、突然見知らぬ旅の男が転がり込んできたのだ。この状態でいつも通りになどできるわけもない。