銀色の月は太陽の隣で笑う
立場が逆だったとして、トーマができるかと問われれば、その答えは当然ノー。
それでも、申し訳なさそうに頭を下げる小さな少女を見ていると、そんな難しいことも願いたくなる。
「そう言えば、ルンは僕のペンをわざわざ拾いに来てくれたんだよね。まだお礼を言っていなかった。ありがとう」
少しでもルウンの中の申し訳なさが消えることを願ってかけた言葉だったが、その表情はどうにも晴れない。
これ以上“ごめんなさい”と頭を下げられるのは遠慮したくて、トーマは何か方法はないかと考えを巡らせる。
その間にも、ルウンの頭はどんどん下を向いていった。
「ねえルン、僕はもう“ごめんなさい”はたくさん貰ったから充分なんだけど、ルンとしては、まだ足りない?」
コクコクと何度も頷くルウンに、トーマは「それじゃあ」とついさっき考えついたことを告げる。
「僕のお願いを、一つだけ聞いてくれないかな。それでどうにか、この話は終わりにしたいんだけど」
“ごめんなさい”以外にお詫びを示す方法が思いつかなかったルウンは、トーマの提案に勢い込んで頷く。
トーマからのお願いを叶えることはつまり、そのままお詫びに繋がる。
けれどトーマとしては、自分で提案しておいてなんだが、内容を聞く前から了承の返事をくれるルウンに、まず心配な気持ちが湧き上がった。