銀色の月は太陽の隣で笑う

その日の夜、ベッドに仰向けで寝転んだトーマは、目を閉じることなくぼんやりと天井を見つめていた。

頭にあるのは、ルウンの事。

無理をしているようには見えなかったけれど、何となく不安が消えない。

くしゃみや、体が震えていたことに加え、頬がやけに赤かったし、ぼーっと一点を見つめていることも多かった。


「風邪の時は温かくして、栄養のあるものを食べて、それから…………薬、か」


お金に余裕のある人ならいざ知らず、普通の家にはまず常備されていることはない。

富裕層が多く暮らす中心地の街では、当たり前のように薬が売られているが、中々に高価であるため、小さな町や村で暮らす人達には手が出せない。

そんな人達は、薬に頼らない独自の治療法を持っている事がほとんどだった。

かくいうトーマも、旅の途中で体調が悪くなったときは、有り金で栄養のあるものをたらふく腹に詰め込み、あとはひたすら寝るという、治療法とも呼べないような方法で体調を回復させてきた。

けれどそれをルウンに実践させるわけにはいかない。何しろ、相手は女の子だ。
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