銀色の月は太陽の隣で笑う

けれどそんなことを知る由もないトーマは、「喉痛いの?大丈夫?」などと見当違いな心配をするので、少女は再びふるふると首を横に振る。

それでもどこか心配そうな表情のトーマは、やがて何かを思い出したようにハッと息を吸い込むと、バッグに手を突っ込んで無造作に中をあさり始めた。

「確かあったと思ったんだよな……」と呟きながらバッグをかき回すトーマを、少女はキョトンとした顔で見つめる。

程なくしてトーマは「あっ、あった!」と嬉しそうに笑って、バッグから手を引っこ抜いた。


「これ、喉の痛みに凄く効くらしいよ。町の露店で買い物をした時に、おまけだってくれたんだ」


「はいっ」と渡されたものをおずおずと受け取ってみると、少女の手の平で、紙にくるまれた丸いものがコロンと転がった。


「ハチミツ飴だよ」


もう一つ同じもの手にしてにっこり笑ったトーマは、紙の中から黄金色の飴を取り出して口に放る。


「うん、甘くて美味しい。ショウガも入っているのかな……少しピリッとする感じもいいね」
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