銀色の月は太陽の隣で笑う

自分を納得させるように“しょうがない”と呟いて、ひとまずどうにもならない過去のことは、ここで一旦考えるのをやめにする。

問題は過去ではなく未来にあって、今考えるべきはレインコートよりルウンの体調。

明日は一日、さり気なくルウンの様子を伺いながら過ごすことにして、今日のところはとりあえず、眠りにつくためにトーマは体制を変える。

徹夜には慣れているので数日くらいは平気だが、それでもやはり思考力も判断力も徐々に鈍る。

そんな状態では万が一の時の対応が危ぶまれるので、それを避けるためにもトーマは目を閉じた。

ルウンが朝方危惧していた通り、昨夜トーマは寝ていない。

だからこそ、目を閉じてから眠りに落ちるまでの時間は短かった。

バケツをひっくり返したようだった土砂降りの雨が、少しずつその勢いを弱めていく。

空が白み始める頃になると、降り続いていた雨は止んだ。

灰色の雲の隙間から青空が顔を出し、久しぶりの太陽が、濡れた大地を明るく照らす。

そして今日も、二人の一日が始まった――。
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