銀色の月は太陽の隣で笑う
「……今、起きるところ……だから」
壁に手をついて体を支えるようにして、ルウンがのっそりと寝室から出てくる。
全身が顕になった瞬間、トーマは思わず息を呑んで慌てて目を逸らした。
見慣れた長袖のワンピース姿であることは変わらないが、いつもその上からつけているエプロンが今日は見当たらない。
けれどそれよりなにより、昨日まではきっちりと留められていたボタンが、今日は上から三つ目までは外れているし、その下に至っては掛け違えている。
ほんの一瞬だけ、胸元から覗く白が見えてしまった。
「ルン……ボタン、もう少し留めたほうがいいと思う。それから、下は全部掛け違えているから」
ゆっくりと視線を下ろしたルウンは、どこかぼんやりしたままボタンを留め直していく。
恥じらう素振りがないのは、トーマを異性として認識していないというよりは、そこに考えがいたらない程に頭がぼーっとしているから。
その様子に小さくため息を零しながら、トーマは今朝の目覚めがやけによかった理由を理解した。