銀色の月は太陽の隣で笑う
口の中でコロコロと飴玉を転がすトーマを見て、少女も包み紙をそっと開く。
黄金色の球体を指先で摘んで口元まで持っていくと、ハチミツの甘くていい香りがした。
「もし苦手な味だったら、無理して食べなくてもいいからね。その辺に置いておいたら、明日にはきっとアリのご飯になっているだろうから」
そう言って笑うトーマを横目に、少女は舌先で飴をチロッと舐めてみる。
とろけるように甘いハチミツの中に、確かにピリッと舌を刺激するものがある。
けれどその爽やかな辛味が、よりハチミツの甘さを際立たせた。
ぽいっと口の中に放った飴玉をコロコロと転がして、その美味しさに少女は頬を緩める。
その様子を見て、トーマもまた嬉しそうに笑った。
「それでね、さっきの話だけど」
唐突に話題が戻って、少女は一瞬キョトンとする。
それでも構わず、トーマは続けた。
「キミは、何もお話を持ってないって言っていたけど、そんなの全然構わないよ。だって僕が聞きたいのは、特別なお話じゃなくて、キミの日々の生活、日常のことなんだから」
日々の生活、日常の話とは、一体どんなことを話せばいいのか――ますますキョトンとする少女に、トーマは安心させるように笑ってみせる。