銀色の月は太陽の隣で笑う
思いつきで放ったそのセリフに、ルウンは想像以上の好反応を見せた。それは、提案したトーマの方が驚く程。
「えっと……そうだな。じゃあ、何がいいだろう」
咄嗟の思いつきであったことと、すっかりペースが乱されてしまったこともあって、トーマの脳内はプチパニック。ルウンがワクワクした顔で見つめてくるのも、それに拍車をかけていた。
「ごめん!ちょっと待って」
犬に“待て”をするように咄嗟に手の平を突き出して立ち上がると、ルウンの表情が一瞬不安げに歪む。
けれど、それからトーマは動物園のクマよろしく部屋の中をウロウロと歩き回り始めたので、またホッとしたように表情を緩めた。
待っている時間が長ければ長いほど、期待感も膨らんでいく。
トーマは、一体どんなお話を聞かせてくれるのか。旅人として巡った場所や出会った人達の話だろうか。それとも、物書きとして創造した世界の話だろうか。
どちらにしても、ルウンにとってワクワクするような話であることに違いなく、歩き回るトーマを追いかける視線も、自然と熱を帯びる。
時間をかけるほどにルウンの期待感が高まっていることなど露知らず、トーマは部屋の中をウロウロ。部屋の端から端までを行ったり来たりしながら考えている途中、ふと顔を上げると、窓が目に付いた。