銀色の月は太陽の隣で笑う
勢いはさほどでもないが、今日も雨が降っている。それをジッと眺めていると、自然と足が止まっていた。
しばらくそのまま窓の向こうを見据えて動きを止めていたトーマは、やがて何かを思いついたように一つ大きく頷いて、椅子まで戻って腰を下ろす。
それを待っていたルウンは、一層表情を輝かせた。
「雨の話にしようかと思うんだけど、どうかな……?」
ただでさえ気分が憂鬱になる雨季に雨の話など、尚更気分が落ち込むかとも思ったが、これまたトーマの予想を裏切って、ルウンはすぐさま頷いた。
「あっ、えっと……ルンは、雨季の始まりを知っている?」
またもペースが乱れそうになったのを何とか気力で耐えて、トーマは問いかける。ルウンは、コテっと首を傾げた。
「……はじ、まり?」
それは以前聞いた、”雨季の意味”とはまた違う話なのだろうかと考えていたところで、トーマがホッとしたように続ける。
「よかったら、聞いてくれる?」
ルウンは一旦浮かんだ疑問を引っ込めて、小さく頷いた。
「今から話すのはね、大昔に本当にあったって言われている話なんだ」
驚いたように目を見開いたルウンに、トーマはようやく力を抜いて楽しそうに笑った。
「それじゃあ定例に則って、昔々から始めようか――――」