銀色の月は太陽の隣で笑う


“いつになったら、本当の姿を見せてくれるの?”


少女はね、気がついていたんだ。そもそも彼女は、初めて森に入った時からずっと、一人ぼっちの魔法使いを探していたから。

別に、魔法で何かをして欲しかったわけじゃないんだ。少女はただ、魔法使いが呆気に取られるくらいに優しかっただけ。

だから探していた理由も単純で、単純すぎて、魔法使いは戸惑った。

好意の裏に下心を隠した人間は嫌と言う程見てきたから、一見すれば簡単に見抜けるけど、少女にはそれがなかったんだ。だから、尚更戸惑った。

それからも少女は、魔法使いを探して何度も森を訪れたんだ。その度に魔法使いは鳥の姿で飛んでいって、出口へと導く。

少女はもう、“いつになったら――”とは聞かなかった。それまで通りに笑って、“ありがとう。またね”って森を出て行く。

そんな日々をね、いつしか魔法使いは楽しみにするようになっていったんだ。

一人ぼっちの寂しさを、少女の優しさが、ひと時でも慰めてくれる。

何をするでもない。ただ、まるで迎えに来るように森の奥にやって来た少女を、鳥の姿で出口まで導いてやるだけ。

当然会話もないけど、時折少女が一方的に話し出すから、それを黙って聞いていたんだ。

そんな日々が、魔法使いにとっては安らぎだった。

でもね、そんな穏やかな日々にも、やがて終わりの足音が近づいてくる。

なぜってそれは――――
< 137 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop