銀色の月は太陽の隣で笑う
パタンと本を閉じるように、そこで一旦口を閉じたトーマは、口元にふっと笑みを浮かべる。
いつの間にか、ルウンがすやすやと寝息を立てていた。
「続きはまた今度、だね」
小さく笑って囁いたトーマは、ルウンを起こさないようにそっと椅子から立ち上がると、枕元にあるボウルを手に取って、できるだけ足音を立てないようにして寝室を出た。
氷が溶けてすっかり温まってしまった水を新しい物に変えると、またそっと寝室に戻って、今度は慎重にルウンの額からタオルを取る。
こちらもすっかり温くなったものを持ってきた氷水に浸し、きっちり絞ってからまた慎重に額に戻す。
かなり緊張感のある作業だったが、幸いにもルウンは僅かに身じろいだだけで、目は覚まさなかった。
ふう……と安堵したように息を吐き、トーマは丸椅子に腰を下ろす。
何気なく窓の向こうに視線を動かすと、いつの間にか雨が止んでいた。
それでも空は変わらず分厚い雲に覆われていて、またすぐにでも降りだしそうな気配を濃厚に漂わせている。
窓からそっと視線を外して、トーマはベッドの上に視線を戻した。
眠っている顔は穏やかそうに見えるが、頬はまだ熱を持って赤く、呼吸も浅い。