銀色の月は太陽の隣で笑う


「本当にごめん……ルン」


本人がいないところで謝ってもしょうがないことは分かっているし、そもそもに未遂なのだが、トーマはどうにも謝らずにはいられなかった。

しばらくそうして机に突っ伏していたトーマは、やがて何の前触れもなく、よし!っと立ち上がると、ルウンがいつも外仕事用に使っているカゴを取りに行く。

これはせめてものお詫びと、トーマはそっと扉を開けて曇り空の下に出て行くと、駆け足で裏に回った。

勝手の分からない畑はチラッと視線を送っただけで素通りし、真っ直ぐに鶏小屋に向かう。

騒ぐ鶏をなだめつつ、ルウンの手順を思い出しながら何とか作業を終えると、雨がぱらつき始めた中を再び駆け足で戻った。

扉をそっと閉めてから寝室を覗きに行くと、ルウンはまだ寝入っている。

ホッと一息ついて寝室から顔を引っ込めたトーマは、椅子に腰を下ろし、顔を突っ伏す代わりに今度はテーブルにバッグから取り出したノートを広げた。

万が一ルウンに話の続きをせがまれた時の為に、予習しておこうと思ったのだ。

あの話はトーマも聞いた話なので、その時ノートにメモを取った記憶がある。パラパラと捲っていくと、目的のページは割りとノートの最初の方にあった。
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