銀色の月は太陽の隣で笑う
する機会がなかっただけで知らないわけではないが、少女は再び不思議なものを見るように、差し出されたトーマの手を見つめる。
しばらくそのまま、トーマは少女の反応を待った。
けれどいつまで経っても一向に反応が見られない為、諦めて手を引こうとした時、少女はようやくおずおずと自分の手を差し出した。
伺うように顔を上げる少女に、トーマは安心させるようにニコッと笑って、引きかけた手をそのままにして、近づいてきた少女の手をそっと握った。
触れた瞬間、少女の手がピクっと動いて、少しだけ逃げるように引かれる。
その反応は何となく予想がついていたから、トーマは強く握ったりしなかった。
それはほんの少し触れ合うだけの、柔らかい握手。
「改めまして、よろしくね。ぼくのことは、気軽にトーマって呼んで」
少女がコクっと頷いたのを見て、トーマはそっと触れていた手を離す。
トーマの手が離れると、少女はしばらく握手を交わした方の手をジッと見つめていた。