銀色の月は太陽の隣で笑う


「……美味しい」


向けられたはにかむような笑顔に、トーマも釣られて微笑み返した。


「それはよかった」


相変わらず、ルウンの笑顔に反応して心臓が高鳴りだす。

けれど今日はそこに、大きな不安も絡みついていた。


「一緒に、パンも食べない?スープにつけて食べるの。どうかな」


トーマの提案に、ルウンは小さく首を振る。

答えは予想通りだったけれど、ついガッカリする気持ちが表に出てしまって、トーマは肩を落とす。

それを見たルウンは、おずおずと口を開いた。


「……トウマ、お腹空いてる?」

「え?あっ!違うんだよ。僕はね、全然。これで充分だから」


予想外の言葉に慌てて言い募るトーマに、ルウンの表情が疑わしそうに変わる。

ルウンが体調を崩して寝込んでからこの方、同じものを食べ、どうしても食べられないときは一緒に食べないという日々を送ってはいたが、ある程度の空腹には慣れているトーマにしてみれば、これくらいなんてことはなかった。

旅人をしていれば、時には水だけで何日も凌がなければならないような事態にも陥ったりする。
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