銀色の月は太陽の隣で笑う

その時のひもじさに比べたら、こんなのは空腹のうちにも入らない。


「僕のことは、何も心配いらないから。それよりルンは今、自分の体のことを心配するべきだよ」


疑わしそうな視線を真っ向見つめ返すトーマに、ルウンは勢いに押されたようにコクっと頷く。

よし、と一つ頷いたトーマは、スプーンを口に運ぶ直前で、思い出したように顔を上げた。


「ところでルン、この家には風邪に効くような薬ってあったりするのかな?」


ないだろうと今まで勝手に決め付けていたが、万が一ということもある。

万策尽きかけているトーマは、僅かな希望を抱いて問いかけた。けれど、ルウンからの答えは予想通り。


「……薬、高いから」


理由もまた思った通りで、トーマは今度こそ落胆を表に出さないように気をつけて、「そっか」と答えた。

いざとなったら、やはり薬は買いに行くしかないらしい。

そうなったら、薬を買うついでに医者も呼んでこようか。それとも、連れて行って医者に見せてから薬を買ったほうがいいだろうか。
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