銀色の月は太陽の隣で笑う
密かに頭の中で計画を練っていたトーマは、不意に視線を感じて顔を上げる。
どこか気まずそうな顔のルウンと目が合った。
「おかわりあるよ」
笑顔で声をかけると、ルウンの首が小さく横に振られる。そして、手にしていた器を遠慮がちにお盆に置いた。
その意味は、言われずともトーマには分かる。
残ったスープを勢いよく飲み干して立ち上がると、何も言わずにルウンの膝の上からお盆を持ち上げた。
「先に片付けてくるよ。少し待っていて」
言いながらさりげなく器の中を覗けば、確かに減ってはいるものの、食べた量は半分にも満たっていない。
思わず漏れそうになった悩ましげなため息を既のところで飲み込んで、トーマは寝室をあとにする。その背中を見送るルウンの瞳には、申し訳なさと少しの寂しさが滲んでいた。
近頃、戻ってくると分かっていても、どうしても離れていく背中に寂しさを覚えてしまう。
これまでは感じたことのなかったその感情が、風邪で弱ったルウンの心をじわじわと侵食していく。