銀色の月は太陽の隣で笑う

トーマの姿が見えなくなると、今度は少しでもその存在を感じようと足音に耳を澄ます。

音だけでも、トーマが確かにそこにいると感じられれば、不思議と安心できた。

トーマの足音以外にも、耳を澄ませば、色んな音が聞こえてくる。

キッチンから聞こえてくる水音や、食器がぶつかる危うげな音、窓や屋根を叩く雨音に、吹き付ける風の音まで。

しばらくそうして聞こえてくる音に浸っていると、やがて待ち望んだ足音が近づいてきた。

かつて扉があった空間をジッと見つめていると、トーマが遠慮がちに顔を覗かせる。目が合うと、トーマは笑って寝室に足を踏み入れた。

ルウンは、起こしていた体をいそいそとベッドに横たえ、お話を聞く体制を整える。寂しさも申し訳なさも、もうとっくに吹き飛んでいた。

可笑しそうに笑って丸椅子に腰を下ろしたトーマは、咳払いを一つして声の調子を整え


「それじゃあ、また続きから」


ほんの少し、思い出すような間を空けてから、語り始めた――。
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