銀色の月は太陽の隣で笑う

いつかはそうなると分かっていたけど、あまりにあっけなく訪れたその瞬間に、魔法使いといえども心が追いつかなかったんだ。

一人ぼっちの寂しさを紛らわせてくれた、一人の少女。彼女の優しさも笑顔も、もう二度と魔法使いを癒すことはない。

最期の瞬間、会えてよかったと嬉しそうに笑った顔を思い出して、彼は泣いた。

穏やかな日々をくれた彼女に、何一つ返すことができなかった自分を悔やんで泣いた。

彼女と同じ時間を生きられない、自分の内にある力を呪って泣いた。

かけがえのないものを失ってしまった、その喪失感に泣いた。

夜が明けて日が昇り、また次の夜が来ても、魔法使いは泣き続けた。何日も何日も、涙は止まることなく溢れ続ける。

その悲しみに呼応するように、空が次第に厚い雲に覆われていったんだ。

魔法使いの強すぎる力が、意図せず天候を支配してしまった。

――――やがて、雨が降りだした。

何日も何日も。夜が明けて日が昇り、また次の夜が来ても、その雨が降り止むことはおろか、雲が晴れることもない。

魔法使いの涙は、雨になったんだ。

悲しみも、悔しさも、絶望も、喪失感も、全てが雨に変わって、それから何日も降り続いた。

その雨は時に人々の生活を潤し、時に人々を災害にて苦しめる。

魔法使いのやるせなさと、少女の優しさが混じりあった雨、それが――
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