銀色の月は太陽の隣で笑う


「――雨季の始まりだって、言われているんだよ」


なるほど、と一旦頷いてみせたルウンは、しかししばらくしておずおずと口を開く。


「……前に聞いた、雨季にも、意味があるって話と……どっちが本当?」


不思議そうに首を傾げるルウンに、トーマは笑って答える。


「そうだね。一般的には、雨季の雨はやって来る暑い季節への備えだって言われている。このお話は本当にあったことだって聞いたけど、それは実際のところ誰にも分からない」


雨季は、やって来る暑い季節への備えなのか。それとも、悲しい別れの末に生まれたものなのか――。


「何が正しいとか、間違っているとかじゃないと僕は思っているんだ。もしかしたら、雨季にはもっと別の意味があるのかもしれない。別の物語が隠されているのかもしれない。それか、そこにはそもそも意味なんてないのかもしれない。でも、“ない”って決め付けてしまったらつまらないけど、“何かある”って思ったら、なんだかワクワクしてこない?」


トーマの瞳が、言葉通りワクワクしたように輝き出す。


「何が本当かなんて、誰にも分からない。そんな物語が、この世界には溢れているんだ。それって、凄く面白いことだよ」


楽しそうに語るトーマの姿を見ているうちに、ルウンの中にも次第に同じ気持ちが湧き上がり始める。

トーマがそんなにもキラキラした瞳で語るのならば、それはきっと楽しいことであるに違いない。
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