銀色の月は太陽の隣で笑う
それをしばらくジッと見つめて、トーマはその意味を考える。
何が欲しいのか、何を求めているのか。ルウンの表情を窺うと、その唇がとても小さく動いて微かな音を発した。
そのたった一言は、確かにトーマの耳に届く。
しばらく迷うように視線を彷徨わせていたトーマは、やがて意を決して、所在無さげに浮かんでいた手をそっと握った。
「……トウマの手、あったかくて……おひさま、みたい」
ようやく繋いでもらえた手に、ルウンは嬉しそうに呟いて、安心しきった顔で目を閉じる。
やがてその胸が規則正しく上下して、微かな寝息が聞こえてきたところで、トーマは深く息を吐きながら、繋いでいない方の手で顔を覆った。
包み込んだ小さな手は、弱々しくも確かにトーマの手を握り返していて、求めるように自分を見つめていた瞳と、”手”と微かに動いた唇を思い出す度に、心臓が痛いほどに高鳴り出す。
次第に強く確かなものになっていく感情は、確実にトーマを侵食していた。
「予想外の事態なんて旅人にはつきものだけど、これは流石に……」
幾度もの出会いと別れを繰り返し、ひとところに留まることのない旅人である自分が、まさかこんな気持ちに悩まされる日がくるなんて、トーマは思ってもいなかった。