銀色の月は太陽の隣で笑う
10 隠れた気持ちとホットワイン
未だベッドの上で絶対安静を言いつけたルウンの代わりに、トーマは地下の食料貯蔵部屋を見に来ていた。
壁際の棚には、ジャムに砂糖漬けに塩漬けにピクルスと、保存が効くように加工されたものが瓶詰めにされて並べられ、燻製された肉や魚も置いてある。
綺麗に整頓されていてもどこか雑多な雰囲気があるその部屋をぐるりと見渡して、何も異常がないのを確認しつつ、風邪に効きそうなものが置かれていないかもチェックしていく。
「やっぱり肉かな……。こういう時こそ、ガッツリの肉でパワーを――」
ゴツっとつま先に何かが当たる感覚に、トーマは踏み出した足を一旦戻して視線を落とす。
足元には、瓶が一本転がっていた。
「……やばい。割れてないかな」
急いで瓶を掴みあげて、ぐるぐる回して無事を確認する。
幸いヒビの一つも入っていないようで安心したトーマは、ちょうど自分の方を向いていたラベルを見てしばらく動きを止めた。
「これって……」
ぶどうとワイングラスが描かれたラベルには、トーマも見覚えがあった。