銀色の月は太陽の隣で笑う
中身はほとんど減っていないが、確かに開けた痕跡があったので、トーマは瓶の口に鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
嗅ぎすぎるとクラっときてしまいそうな、発酵されたぶどうの香り。
「やっぱり、ぶどう酒か」
なぜそれが無造作に床に置かれているのかはこの際置いておいて、トーマは瓶を見つめる瞳に力を宿す。
「これがあれば……」
現状を打開してくれるかもしれない見つけものに、トーマはすぐさま踵を返して階段を上る。
地下から上がってくると、ビックリするほど部屋が温かく感じたが、それに浸る暇もなくトーマは寝室へと急いだ。
「ルン、入るよ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
一声かけてから寝室を覗くと、ルウンがもぞもぞとベッドに身を起こすところだった。
「ああ、大丈夫だから。横になっていて」
足早に近づいて再び横になるよう促すと、トーマは早速地下から持ってきた瓶をルウンに見せる。
「地下はね、特に異常なかったよ。それで、いいものを見つけたから持ってきたんだけど、これ使ってもいい?」